介護施設コンサルティングなどを行う合同会社4U(兵庫県尼崎市)は2023年7月20日、コロナ禍における経営課題を全国107の介護施設関係者らにインタビューした結果をまとめ、発表しました。最も解決したい課題としては、施設の72%が「収益改善」と回答しています。人材育成・定着が64%、求人が42%で続き、介護施設の抱える課題は突き詰めるところ「カネとヒト」であることが改めて浮き彫りになりました。
収益の落ち込みは、デイサービスや訪問介護などの訪問系で顕著でした。コロナ感染をなるべく防ぎたいという、利用者や家族の意向が背景にあったと考えられます。特養や有料老人ホームなど住居系の場合は、感染の心配はあっても対応のしようがなかったかもしれません。
新型コロナウイルス感染症は、感染症法上の分類が2類から5類に引き下げられ、行動制限も原則として解除されました。しかし、まだまだ入居者・利用者の獲得に苦労している事業所も多いようです。
ヒトの問題とカネの問題は表裏一体
経営課題の第2位は人材育成・定着で、第3位が求人でした。両課題はヒトに関するもので、根っこは同じと言えます。人手の確保が難しく、育成や定着もままならない……介護現場の苦境が目に浮かぶようです。また、収益が改善しなければ人材への投資や教育・研修などもできませんから、上位3つの経営課題は相互に連携し合う構造です。
この調査では、課題解決の方法は提示されていません。ヒトの問題は、賃金を大幅アップすれば改善するはずです。ただし、収益改善がなければそれはできません。カネの問題については、国のより積極的な関与が必要だと感じます。
介護保険制度は、支え合いの仕組みとして必要でしょう。介護を必要とする人は増えこそすれ減りはしないのですから、介護保険の中身を見直し、介護施設及び介護職員にお金が回るようにすべきです。介護の担い手がいなくなってからでは遅すぎます。今回の調査から、そんなことを思いました。