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マイナンバーカードを保険証として使うと医療費が上がるという問題

2022年5月19日

 2022年4月からマイナンバーカードを健康保険証として使う(マイナ保険証)ことができる医療機関を受診すると、診療報酬が加算されることになっています。

 簡単に言えば、患者の支払いがこれまでより少し多くなるということです。

 月の支払いがどのくらい増えるかというと、マイナ保険証を使った場合、自己負担3割とすると初診で21円、再診は12円、調剤なら9円です。

 マイナ保険証が使える医療機関で、従来の保険証を使った場合も初診時9円の加算があります。

政府の魂胆は今のところ空振り

 診療報酬が上がることをエサにして、マイナ保険証が使える医療機関を増やそうという政府の魂胆だったわけですが、報道などを見る限りではうまく運んでいないようです。

 マイナ保険証には、マイナポータルを経由して診療・薬剤情報が確認できるなど患者にもメリットがあります

 とはいえ、医療機関にインセンティブを付けるなら、診療報酬ではなく公費でやるべきでしょう。

憤りを隠せない健保組合関係者

 マイナンバーカードに保険証の機能を持たせるため、サーバー代などのコストと手間をかけさせられてきた健康保険組合の関係者は憤りをあらわにしています。

 健保組合の団体である健康保険組合連合会(健保連)の佐野雅宏副会長は4月の臨時常任理事会で以下のように発言しました。

 医療界などの動きも極めて鈍いなかで、無理やり制度をスタートし、健保組合のメリットもまったく出ないのに、コスト負担だけさせられる悪循環が続いている。

 医療費の増加やそれに伴う国への拠出金の増加で財政状況が厳しい健保組合が多くなっているというストレスもあってか、かなり率直な物言いでした。

拙速が招いた配慮に欠ける制度設計

 小規模な診療所では導入コストに見合うメリットはありませんし、一部の診療所で処方された薬剤情報についてはマイナポータルから参照できない仕組みもほったらかしです。

メモ

細かい話になりますが、マイナ保険証の利用者に処方された薬剤が何であるかは審査支払機関のサーバーに見に行くことでわかります。

しかし小規模な診療所など一部には審査支払期間を通していないところがあり、そういうところで処方された薬剤についてはマイナ保険証を使ったとしてもわからないのです。

マイナ保険証で過去に使っていた薬剤を確認したとしても、併用してはいけない薬剤を、それとは知らずに別の病院等で処方してしまう併用禁忌の問題が起こらないとは言い切れません。

レアケースかもしれませんが、こういうことがあるのを知らずに制度設計されたようにしか思えないのです。

 個人的には「マイナ保険証けしからん!」という報道ぶりには違和感を覚えますが、マイナ保険証の導入そのものは細かな詰めを欠いていて、拙速だったと感じています。



  • この記事を書いた人

nararou

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